1枚目:マレーシア・サバゴルフ協会会長 ポールブーン氏(中央)
2枚目:TV番組出演中の松井利樹プロと中華の鉄人・陳建一氏とともに…
3枚目:ポール・ブーン氏はボルネオゴルフ&CCオーナーでもある。
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それにしても日曜日のタイガーは凄かった。
もちろん世界24カ国からの精鋭が集まった、ワールドカップ最終日15番からの「奇跡の4ホール」のことである。
3連続バーディーは巷間言われる集中力やゾーンで説明出来なくもないが、最終ホールのチップインイーグルだけはとても人間業とは思えない。法面のワンクッションもTVの解説では狙っていた所に…と言っていたが、実際は思ったより低く飛び出したのであろう。VTRをスローで繰り返して見てみたが、彼が事前にマークした地点より30~40CMは手前にファーストバウンド、低く弾けたボールはカラーに軟着陸の2バウンド目でスリップ、その後の転がりはまるで予め敷かれていたレールを滑走するかのごとくカップに吸い込まれてしまった。
あのラフとグリーン面の複雑な摩擦と傾斜をいくらタイガーといえども正確に計算してショットすることは到底不可能、あれは明らかに人智を超越したエネルギーの仕業である。西暦943年刊行、中国は南唐の「史書」の中に出てくる捶丸(ツイワン)から起算するとナント一千年以上にも渡って、それも世界中で人間がゴルフをし続けている所以である、と思った。
チームワーク良く実力通りの力を発揮して優勝した全米オープン覇者コンビ、エルスとグーセンには申し訳ないが、今回のプレーオフはもうおまけみたいなもの。あの4ホールのタイガーこそ「ゴルフの神様」が日本の熱烈なゴルフファンに遺した使者であり、あのチップインイーグルこそ大ギャラリーと多くの視聴者に、「人生にゴルフのある幸せ」を改めて確信させてくれた素敵な贈り物であったに違いない。
せっかく新たな希望を抱いて21世紀がスタートしたばかりだというのに、この2ヶ月間というもの、アメリカから押し寄せる前世紀と相も変わらぬ人間の愚行の話題ばかり。失望と悲嘆に暮れていた私達にとって「ゴルフの神様」は、人類と地球の未来についてまたちょっと夢を繋いでくれました。
「戦争の一番の原因は経済発展の地域格差であり、二番目の問題は宗教だ。マレーシアの国教はイスラム教であるが、仏教、キリスト教、ヒンズー教、それぞれ互いの宗教を尊重して平和に共存している。」
「日本人は家に仏壇を置いて死者は寺で弔い、正月は神社に参拝し、結婚式は教会を好む。たぶんこんな特異な宗教観を社会システムに組み込んでいる国は、世界で唯一日本だけだろう。」
「マレーシアでも襟の付いたシャツ着用義務のコースは数多い。しかしそれは階級社会で発展したゴルフの、自分達の身分を主張するための名残りだ。ネクタイにブレザーやニッカポッカスタイルのゴルファーがほとんど見受けられなくなったように、襟の話題もいつしか世界中から忘れられるだろう。もっとも時代や地域、年令や体型に応じたゴルフのお洒落にはいつもこだわり続けていきたいものだが…(笑)。」
ゴルフを通して世界を見つめる。
民族・宗教・文化を越えてゴルフは相互理解のための世界共通語。「GOLF IS MY LIFE」と言い切るマレーシア・サバゴルフ協会(SGA:加盟コース19)の会長MR.PAUL VOONとの交流は深夜まで続いた。