モントレー半島はアメリカゴルフの聖地です。 PART 3 スパイグラスヒル ”ロバート・トレント・ジョーンズと息子達”

SPYGLASS HILL 2nd / SPYGLASS HILL 15th / SPYGLASS HILL 16th

ALL Photos by T.SHIMAZU (APRIL ’99)

風が出てくると4月だというのに結構寒い。考えたら昼飯も取らずにもう2時半か? 日没までもう1コースは押えたい。慌てて次の目的地シャトルバスで5分程のスパイグラスヒルへ向う。

1940年代からその革新的設計技法を通じて後世のパーマーやニクラスに多大な影響を与え、世界中に約400コースの業績を遺した ROBERT TRENT JONES はここモントレー半島でも燦然と輝いている。スパイグラスヒルは自ら設計に携わりスパニッシュベイとポピーヒルズは長男 R.T.JONES Jr.の作である。何と偉大な父親なのであろうか、何と幸福な親子なのであろうか! 弟の REES JONES は主に東海岸に、西海岸とアジアは長男に委ねて親子3人で世界中の至る所に至福の業績を遺している。

SPYGLASS HILL GC(18H 6,810Y P72 C/R76.1 1966年開場)

砂丘のフロントナインは〝パインバレー〟を、森のバックナインは〝オーガスタ〟をイメージしたという、メリハリの効いたコンセプトの振り分けが見事だ。スターティングホールは高い松林の回廊を左に軽くドックレッグさせながら打ち出していく美しいホールだが、森を抜けると豹変する。3・4・5番と海岸沿いに出ると風がハンパじゃない。荒涼とした鉛色の太平洋を背景に、黄色いピンフラッグが折れそうな位撓っている。いつもこんなに強い風なのだろうか。とにかく砂丘の一部に緑のカーペットを敷き詰めたようなコースなので、灌木も低くまさに吹き曝しとはこのことだ。これはスコットランドのリンクスというよりはむしろ北アイルランドの光景なのか?

インコースに入ると様相は一変する。あれ程の強風がモントレーパインの密集した森に囲まれて静まり返り、木々の隙間からこぼれる斜光の影が格別にシャープで美しい。ティーインググランドとグリーン回りに豊富に樹木を残して絵を固めながら、フェアウェイは決して狭くない。先月、北海道の〝桂ゴルフ倶楽部〟の項でも触れたがジョーンズファミリーはティーインググランドの高さをとても大切にしている。マーク別に高さをたっぷり取ってホールのタテアングルの視界を良くして、ボールの打ち出す方向と高さ、それに玉筋をより効果的に暗示する、まさにジョーンズ親父の絵だ。オーガスタの撮影した時もそうだったが、思わずカメラをタテ位置にして構えたくなる衝動に駆られる。

あっ!フェアウェイの鹿がこっちを見ている。もう少し寄りたい、でも逃げるかな? あと3歩前進してくれたら、顔に光が入るのに…。